闇夜ヨルの恐怖記録2
☆☆☆

「あがれあがれぇ!」


6時間目のサッカーの授業中、マサシはチーム全体に声をかけて全力で走った。


同じチームのメンバーたちはそれに引きずられるように足を前へ前へと出す。


敵チームの中にはタカヒロもいたけれど、マサシにはそんなこと関係がなかった。


ボールがマサシに回ってきた時、それは足に吸い付くように近づいてきて、決して離れることがなかった。


ドリブルをするたびに明後日の方向にボールが飛んでいって、味方の足を引っ張っていたマサシとは大違いだ。


ゴール付近まで一気に走ってきたマサシは思いっきりボールを蹴り上げた。


ボールは敵チームに阻止されることなく、ゴールネットを揺らす。


その瞬間仲間から大きな歓声が沸き起こった。


みんなが一斉にマサシに駆け寄ってきて、背中や肩をばんばん叩く。


そんな中、タカヒロは呆然とグラウンドに立ち尽くしていた。


サッカー部のエースは今日の授業で1度もサッカーボールに触れることができていなかったのだった。
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