闇夜ヨルの恐怖記録2
だから誰かから奪われるものだってないのだ。


そう思って安心していたとき「いや、やっぱりお前からもうらものがあるみたいだな」と言われて目を見開いた。


「俺から何を奪っても意味ないよ。勉強もできないし、スポーツも苦手。それにリーダーシップもないし見た目もよくない」


自分で説明しながらどんどん落ち込んでいってしまう。


だけどこれが現実だ。


だからこそ、このゲームが役立っているんだから。


しかし男子生徒は左右に首を振った。


「お前、自分の魅力に気がついてないんだな」


それは憐れむような声だった。


「え?」


マサシが首をかしげるとほぼ同時に「俺はマサシから綺麗な肌を奪う」と言われていた。


ハッと息を飲んで自分の頬に触れるといくつかのニキビ跡ができていた。


更におでこには新しいニキビが2つ。


代わりに男子生徒の顔はツルリとした卵のような肌に変わっていた。


「おぉ、前よりもずっと男前になったじゃん」


「へへっ。ずっとニキビに悩んでたから、丁度よかった。サンキューな」


嘘だろ、そんな……。


一瞬息を飲んだマサシだったがすぐに気を取り直した。


奪われたのはたかが肌だ。


そんなのどうってことはない。


少なくても勉強やスポーツみたいに、将来の夢を目指すなにかではないんだから。
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