闇夜ヨルの恐怖記録2
クニヒコがそう言うと、何人かの生徒が頷いてくれた。


元々勉強が得意な印象のクニヒコの周りにクラスメートたちが集まってくるのに、時間はかからなかった。


「今の総理大臣は香川さんだけれど、その前の総理が提案していたものがあって――」


「クニヒコ、お前本当によく調べてきてるな」


さっきクニヒコをからかった男子生徒が感心したように言う。


さっきから腕組みをして真剣にクニヒコの話を聞いていた。


「あぁ。勉強は好きだからさ。ハルカ、君もこっちにおいでよ」


手招きをすると通路に立っていたハルカは少し気まずそうな表情を浮かべて、両手で抱きしめるようにして持っていた数学の教科書を見せた。


「私、数学が一番苦手なの。だから、勉強を習うなら数学がいいの」


そう言うとタカシの机へと走っていってしまったのだ。


クニヒコは愕然としてハルカの後ろ姿を見つめる。


「そうだよなぁ。クニヒコの記憶力はすごいけど、受験にはあんまり役立たないよな」


「おい、やめろよ」


クニヒコを笑う声が、また少し聞こえてきたのだった。
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