闇夜ヨルの恐怖記録2
☆☆☆

歴史を見ながら歩くのは大冒険だった。


クニヒコが思っていた通り自分が暮らしていた家の周りは当時沼になっていたようで、信号機のすぐ近くには大きな水たまりがあった。


黒く淀んだ水の中に木の枝を突っ込んでみると、どこまでも沈み込んでいってしまった。


それほど大きくない水たまりだと思って足を踏み入れたら、もう二度と戻ってこれないことになっていたかもしれない。


「随分と遅かったわね。やっぱり迷子になった?」


徒歩10分ほどの距離を30分もかけて歩いてきたクニヒコに母親はまっさきにそう聞いた。


すでに車の中の荷物は降ろされていて、すぐに使う食器類を片付け始めていた。


「ううん。ちょっと冒険をしてただけ」


「冒険?」


首をかしげる母親を無視して、クニヒコは自分の部屋になる一番奥の和室へ向かった。


アパートは6畳の部屋が2つとリビングダイニングが1つという間取りで、和室の1つがクニヒコの部屋、もう1つが夫婦の寝室になる予定だ。


自分の部屋に入ると父親がクニヒコの机を運び入れてくれているところだった。


クニヒコは慌てて手伝った。


「この机、よく玄関入ったね」


「あぁ、ギリギリだったけどな」


机や大きな家具は一度バラさないとアパートび入らないかもしれないと懸念していたのだ。


それでもどうにか入れることができたみたいだ。
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