闇夜ヨルの恐怖記録2
それでも、見るのは自分なのに!


そう言うよりも先にタカシは大きく襖を開いていた。


異臭が流れ出してまた吐き気がこみ上げてくる。


「なにが入ってるか確認できるか?」


そんなの無理だよ!


と、心の中で叫びながらジリジリと押し入れに近づいて行く。


ライバルの前でダサイところを見せたくなかった。


だけど箱の中を確認した途端に後悔した。


そこには沢山の猫たちが詰め込まれていて、身動きが取れない状態だったのだ。


ただ助けてほしいという鳴き声ばかりが聞こえてくる。


「ひどい」


クニヒコは思わず顔をそむけた。


できれば今すぐ助けてやりたい。


だけどこれは過去に起こった出来事だ。


ダンボール箱を押入れから出すことはできても、外に運び出すことはできなかった。


見ること、触れることはできるけれど歴史を返ることまではできない。


「ダメだ。猫たちを助けることができない」


クニヒコが歯ぎしりをしたとき、タカシがなにか思いついたように息を飲んだ。


「でも、段ボール箱に触れることはできたんだ。この部屋の中を探してみれば男の名前がわかるかもしれない!」


そう言われてクニヒコもハッとした。


ここで犯人が暮らしていたのなら、個人情報が乗ったものがあってもおかしくないはずだ。
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