きみは溶けて、ここにいて【完】




「イエスマン、嫌なんだ。今日も、一緒にカレー作りたかった、から。途中から、一緒に作れて、嬉しかった」


 言い方を間違えていないだろうか。間違えていたら、間違えていると言ってほしい。


そう思いながら、言い終えて口を閉じたら、浜本さんが、苦笑いをして頷いた。

それが、どういう気持ちからくる表情なのか私には分からなくて、怖くなる。

だけど、浜本さんの口から出た言葉は、「ごめんね」で、傷つけあわずに分かり合えたのかもしれないと思って、堪らない気持ちになった。



「そりゃ、イエスマン、嫌だよね。正直、私も、ずっと保志さんのことそう呼んでたけど、なんか、今、保志さんの口から嫌って聞けて、ちゃんと、ごめんねって思えてる。え、待って、これ、なんか偉そうな言い方になってない? 私、正確に伝えるの苦手なんだよね。日々反省中」

「っ、全然。偉そう、じゃないと思う」

「私は陽が、私らの人参むいてた時点で、保志さんに悪いことしてるなって思ったけど、ごめんねって言うのもサボっちゃった。ごめん」


 吉岡さんにも謝られてしまって、私はおろおろしながらも頷いた。




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