きみは溶けて、ここにいて【完】
どこに連れてこられたのか分からない。
どこまでも行くのだろうか。
果てでも、探しに行くつもりなの? そんなことを思っていたら、私の手を掴む人が、ぴたりと足を止めた。
森のどのあたりにいるのだろうか。
宿舎からは結構離れてしまった気がする。
キャンプファイヤーが終わるころには、戻らなければいけないのに。なんだか、シンデレラの気持ちが今なら分かるような気がした。
だけど、現実だ。
何もかも、魔法ではない。
そっと、手首を離される。
熱くなっていた肌に夜の空気が触れた。
互いに息が切れている。走っているうちに恐怖はどこかへ行ってしまったみたいで、今は怖さよりも、ただ、彼がどうするつもりなのか、それを明かしてほしいという気持ちの方が強くなっていた。
影君、と名前を呼ぶために、口を開く。
だけど、その前に彼は歩き出してしまって、何も言えないまま、慌てて、その背中を追いかけた。