きみは溶けて、ここにいて【完】
「……それでも、無理に、笑わなくて、いいと思うんだ」
「は、」
「……楽しくいることだけが、幸せじゃない、と思う」
「でも、笑っていたら、本当に、幸せになれる」
「そう、だね。だけど、森田君、」
暗闇の中でしっかりと彼の目を見つめる。
蛍の光の点滅の合間で、私は言った。
「今は、……笑わなくて、いい、よ」
悲しみの中にも幸せはあると思う。
森田君は私の言葉に、ハッとしたような表情を浮かべた。
だけど、すぐに、口角をゆっくりと下げて、頷く。
彼の目が、蛍の光の点滅を映していた。
きらきらと、海のように揺れている。
それが、すごく綺麗で、私は悲しくなった。