きみは溶けて、ここにいて【完】





 夏が来たと言うのに、急に体の温度が下がったような気がした。


見下ろされている。自分より下のものを見るような冷ややかな目を向けられている。


だけど、当たり前だ。

 教室にはたくさんの円があって互いに影響を及ぼしている。


だけど、私が彼女たちに及ぼす影響なんて、あってないようなもので、もしも私たちの生きる学校に階級制度があるのだとすれば、間違いなく、私は彼女たちより下だ。



「……どうしたの、かな」



 みんな、私たちに注目しているような気がした。


逃げ出したいと思いながらも、そんなことできるわけがない。


視線の正体は、彼女たちだったんだ。

警戒心をわざとらしく顔に貼り付けているわけにもいかなくて、へらりと笑ったら、島本さんが口を開いた。



「ずっと、保志さんに、聞きたいことがあったんだけど」

「……なに?」

「何って、分からない?」

「ごめんね、……分からない」


 島本さんと話したことなんてあまりない。いつもなら、私なんかに目もくれないような人たちだ。



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