きみは溶けて、ここにいて【完】
泣きたくないのに、泣いてしまう。
どうやって涙を止めればいいのか分からなくて、頷くこともできずにいる。
「……ひとは、誰かを傷つけることもできるけど、同じくらい、誰かを救うこともできると、僕は思うんだ。あなたは、優しくて、……怖がりで、それでも、知らない僕なんかに優しくできるような人で。僕は、保志文子さんのことを、本当に優しいと思う。手紙の中でも、会った時も、それを、感じた。優しいは、結果なんだ。そこにどんな理由があっても、あなたは、僕にとって、優しいひと、です。そんな簡単に、文子さんのことを、誰も嫌いにはなれない」
「っ、……」
「世界はたぶん、文子さんが、思っているより、優しいから。文子さんは、その大切な一部で、それで、本当に、僕は、」
あなたのことが、好き、なんだ。
そう、影君が言って、ブランコから静かに降りた。
私は、嬉しくて、だけど、悲しくて、とても戸惑っていた。
優しい表情で見下ろされる。
「……っ、」
私も、あなたが、好きなのだと思う。
だけど、どうなるの。
消えてしまうとは、どこに行くの。
影君の気持ちは、ないものになるのだろうか。
そうしたら、私は、私の気持ちは、どこへ行くの。