きみは溶けて、ここにいて【完】
言われた言葉がばらばらに頭の中で動く。
そのどれをとっても温かくて、だけど、掬ってしまえば、全て壊れて消えてしまうような気がした。
私は、何を返せばいいのだろう。
好きだと返したら、この夜も、今までの何もかもが、砕けてしまうのかもしれないと思って。
なんて、嘘だ。
この期に及んで、ただ、ひどく臆病になっている。
言葉が、口から出ていかない。涙しか、私、流せない。言いたいのに、言えないことばっかりで、私は、もう、どうすればいいのか分からなくなって。
それで。
ーーー「……っ、ごめん、なさい、」
気が付いたら、影君を置いて、私は、その場から逃げ出していた。
もう、会えないかもしれないのに。
とても、嬉しかったのに。
何一つ、言葉にできずに、泣きながら、家に帰った。