きみは溶けて、ここにいて【完】




 どうして、いつも久美ちゃんは、自分の大切な話をしてくれるんだろう。怖がってばかりで、遠慮ばかりして、勝手に顔色をうかがっている私なんかに。


 どうしてなんだろう。

前はそんなこと考えなかった。


だけど、最近、時々考えるのだ。それで、ありがとうって、前よりも明るい気持ちで思う。

何かあるとすぐにたくさん謝ってしまうし、いつも顔色を窺ってしまうけれど、久美ちゃんはそんな私の傍で楽しそうに笑ってくれていて、秘密の話もしてくれて。



「……全部、どうして、なのかな」



 人と人のつながりというものを、前よりも感じるようになった。

蝶の羽ばたきが起こすのは、もしかしたら台風だけではないのかもしれない、なんて、今は少し思っている。



「なにが?」

「あ、えっと、なんでもないんだけど、……久美ちゃんが、私と仲良くしてくれるの、嬉しいんだ」

「ええ、いきなりだね」

「……一年生のときから、だから。もっと、素敵な人たち、いるのに、ありがとうって、」



 こんなこと、久美ちゃんに伝えたことがない。

なんで、今、伝えようと思ったのかも分からない。いきなり言われても迷惑だろうか。


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