きみは溶けて、ここにいて【完】
まだ、会えるチャンスがあるかもしれない。
空が青くて、きらきらとしている。
逃げ出してしまったことを嘆いて、ずっとうじうじしていたけれど、ここにきてようやく、勇気のようなものがでてきた。久美ちゃんのおかげだ。
「それにしても、文子ちゃんに好きな人ねえ」
「……う、ん」
「……そんなこと、言ってくれたことなかったから。教えてくれて嬉しい」
「私も。……打ち明けられて、嬉しいの」
こころの距離を近づけてみれば、前よりも、気を抜いて話すことができるのだと知る。
まだ、怖さがなくなったわけではない。だけど、なんだか、今は、大丈夫なような気がした。
空がとても青いから。
そうやって、久美ちゃんが言ったから。
影君に会うためにはどうすればいいか。
風に踊る久美ちゃんのツインテールの毛先を視界に入れながら、考える。
それで、私は、手紙を書こう、と決心した。
そもそも、手紙から、私と影君の交流は、始まったのだ。
まだ、影君からの返信は来ていない。もう、来ないのかもしれない。
だけど、会える可能性が、0パーセントかどうかは分からない。可能性がまだ、残っていることを信じたかった。