きみは溶けて、ここにいて【完】
飛行機雲に願った翌日の放課後に、そっと、森田君の下駄箱に手紙を入れた。
今回は、本当に、一見、森田君にラブレターを送る人のようになっていたと思う。
私と森田君だけが知っている秘密。
このままずっと、守っていたい、と思い続けたい。
勝手に約束をとりつけた土曜日は、朝から雨が降っていた。
前日はあまり眠れなかった。夜が白くなってきて、ようやく少しだけ夢に落ちた。
午前十時と影君への手紙には書いたけれど、私は、午前九時半に駅に着いてしまった。
まだ、影君の姿はない。来てくれるのかも分からない。とにかく、ずっと待っていようと思った。夜までずっと待つと決めていた。
そうしなければ、諦めきれないと思ったから。
電車の到着と発車を告げるベルが何度も重なるように鳴っている。改札を抜けて、少し歩いたところで立ち止まる。
柱に背を預けて、ただ、ひたすら待っていた。