きみは溶けて、ここにいて【完】
本当は、今日、晴れてほしかった。
眩しい太陽の下を歩きたかった。
だけど、陽の光のない雨の日でも、
美しいものは、美しい。
数十分ほどで、目的の場所へとたどり着く。
コンクリートの階段をのぼった先で立ち止まり、傘の隙間から、そっと隣をうかがったら、唇をぎゅっと噛んだ猫背の影君がいた。
「ここに、一緒に、来たかったんだ」
「……うん」
「ごめんね。お花なんて好きじゃないかもしれないけど、……ネモフィラ畑に行ったとき、すごく綺麗で、影君も楽しんでくれているように、私には、見えて。だから、」
あなたの目が綺麗に映すのは、淡い青色だけじゃないんだね。
光よりも強い黄色。
あたり一面の向日葵が、影君の瞳に映っている。
無数の向日葵の咲く丘。
雨が降っているからだろうか。誰もいない。