きみは溶けて、ここにいて【完】
今日は、ここが本命だった。
ぽつ、ぽつ、と雨の音だけがする世界で、陽の光の力を借りずとも、向日葵はまるで発光でもしているかのように黄色く咲き、堂々と立っている。
ここでなら、勇気は萎まずにいてくれるのではないかと思った。
「……嬉しい」
「へ、」
「文子さんと、ここに来れて、……僕は、嬉しい」
「……それなら、うん。よかった」
ホッとする。
それからしばらく、私と影君は、ひまわり畑の前に立ち止まったままでいた。
だけど、ずっとそうしているわけにはいかないのだ。時間は有限だ。深く息を吸い込んで決意する。今日、影君に言おうと思っていたことがある。
土砂降りの雨の中、勢いで助けてしまっただけなのに、私のその行為を優しいと言ってくれた人。
中学生だったあの頃、何もかもが怖くて、自分を否定することでしか、うまく呼吸ができなかった。
それなのに、この前の夜、影君に、あの頃の自分を少し肯定してもらえたような気がしたんだ。