きみは溶けて、ここにいて【完】

別れるべきだと朔に伝えた。



　祝福なんてできなかった。

どうして、そんな人を選ぶんだろう。同い年の男の子じゃだめなのだろうか。どうして、祝福から、自ら、遠い場所へ行ってしまうの。


そう思いながら、何度も別れるように、説得したけれど、朔は、自分の恋を譲らなかった。



　大切だったから。私が、朔を守らなければいけないと思って。朔のためなのに、どうしてわかってくれないんだろうと、次第に悔しくなっていって。


きっと、こころの距離が近すぎたんだ。


なんでも言い合える。そういう仲だったけど、なんでも言い合っていいわけじゃない。どんな近い距離にいたって、誰も人を傷つける資格なんてない。

そんなことも、あの頃の私は知らなかった。




「―――気持ち悪い。吐き気がする。誰も、好きになってくれないから、そういう残念な存在に逃げてるだけだよ。かわいそうに。間違っていることをしているから、絶対に、幸せになんてなれない。みんな、気持ち悪いって思うよ。だって、気持ち悪いから。………そういうことを言ったの、私。必死で。言えて、しまった」

「……文子さん、が？」



　頷いたら、朔の顔がまだ浮かぶ。

後悔している。
もうずっと、永遠に後悔し続けると思う。