きみは溶けて、ここにいて【完】
誰を好きになってもいい。
だけど、未成年に手を出す大人は間違っている。朔はまだ十四歳で、私たちは何にも世界を知らなくて。男とか女とか、そんなの関係なかった。
だけど、朔は、男とか女とか、そういう性ををすごく気にしていた。関係ないと、軽々しく思えていたのは私だけだった。どうしたら、うまく伝えれたんだろうか。
どうしても、きっと、朔を傷つけていたと思う。
気持ち悪いと言った私に、朔は、絶望したような顔をして、それから、虚ろな目をして笑った。
ーーー『文ちゃんの正義って地獄みたいだ』
一文字一句覚えている。
ああ間違えた、と思った。
あの日も、雨が降っていたと思う。
土砂降りの雨。まるで、爆弾のように、たくさん降っていたと思う。
「私、今でも、自分が感じたこと、少しは正しいって思うんだ。だけど、だめなの。気持ち悪い、はだめだった。吐き気がする、もだめだった。あのね、正しいことを正しく伝えなかったら、傷つけるために伝えたら、それは、もう、間違いなんだ」