きみは溶けて、ここにいて【完】
森田君の、元気があまりなかったんだ。
相変わらず、クラスの真ん中で笑っている。だけど、本当に、すごく、無理をしているように見えた。
笑い声も、誰かに何かを言う声も、全部、なんだか、ぎこちなく感じて。
私の気のせいかもしれない。そうであってほしい、と心のどこかで思ってしまっていたからかもしれない。
「おい、陽ー」
「うん?」
「今日の放課後、久しぶりに遊び行く?」
「あー、ごめん。パス。直帰する」
「まじ? つーか、夏休みもそうだったけど、なんか、陽、ここ最近、付き合い悪くない?」
「はは、そうかも。ごめんね」
もうきっと、あの日の向日葵たちは萎れ始めている。森田君の笑顔にはそれと同じようなものを感じた。
継ぎ接ぎだらけの幸福を抱きしめて、それでも弱さを背負うことはせず、忍ばせて。
やっぱり、影君が消えてしまったことに喪失感を抱いているのは私だけではないのかもしれないと思ってしまう。