きみは溶けて、ここにいて【完】
「文子ちゃん、後悔してる?」
「してるけど、前に進むしかないとも、思うよ」
「そうだねえ。……たらればを、乗り越えていこう」
今日も空は青いから大丈夫、と久美ちゃんが言う。小さく頷いたら、こつんと身体の半分を久美ちゃんがくっつけてきた。
「失恋カウント、お互いに、イチだね」
「う、ん」
「全然嬉しくないお揃いだね」
「……そうだね。久美ちゃんは、好きな人のこと、頑張ってね」
「ありがとう。文子ちゃんは、元気出して」
うん、と頷いて、空に視線を移す。
飛行機雲は、どこにもない。ただ、青い空が広がっている。
近づけた心の距離は、夏休みを挟んでも、変わらなかったみたいで、私は、やっぱり前よりも少しだけ気を抜いて久美ちゃんと話せていた。