きみは溶けて、ここにいて【完】
そのとき、一際強い風が吹いた。
それに続くように、「保志さん」と私を呼ぶ森田君に、短い沈黙は破られた。
「う、ん」
森田君のほうへ顔を向けて、首を傾げる。
彼は、やっぱり、無理矢理に作ったような笑顔を浮かべていた。
「影が、消えた」
そのことならば、もうすでに、向日葵畑で聞いている。
ゆっくりと頷いて、「言ってた、ね」と返事をする。そうしたら、森田君は「本当に、消えたんだよ」と言う。
もう、期待なんてしていない。
受け入れて、いる。
森田君は、自分が私に言ったことを忘れてしまったのだろうか。