きみは溶けて、ここにいて【完】





 す、と目の下に、森田君の人差し指が触れる。


「泣かないでよ」とまた言われて、優しく涙をすくいとられた。まさかそんなことをされるとは思わず、驚いて、少しだけ身体を後ろに遠ざける。



悲しい涙じゃない、とはもう言わなかった。


森田君は、悲しそうに笑っている。

代わりに泣いてあげてるの、と偉そうなことをほんの少し思った。



「林間学校の夜に話したと思うけど、本当にじわじわ小さくなっていて、もう少しで消えてしまうことはなんとなく俺も影も分かってた」

「う、ん」

「影は、苦しいときに存在し始めたから。自分は、いつか消えなければいけないって、思ってたんだと思う。そういうもの、だったんだと思う」



 森田君が、自分の言葉をひとつずつ確かめていくかのように慎重にそう言った。



影君には、あなたは弱さではないと伝えてしまったけれど、森田君には言わないでおこうと思った。

きっと、森田君と影君は、お互いに私には分からない思いを抱え合っていたのだろうから。


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