きみは溶けて、ここにいて【完】
10. きみは溶けて
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保志さんへ
何を書けばいいのか分からないので、晩御飯の報告をしようと思う。俺が担当で、野菜炒めと豚汁を作りました。めちゃくちゃ、うまかった。保志さんは、何食べましたか?
俺は、最近、読書にはまってます。古典的なものを読んだりしてる。保志さんは、何を読みますか?
手紙ってこういうことで合ってるよな?
影の方が手紙を書くのは得意な気がします。
あのさ、保志さん。あなたに、伝えたことは何一つ嘘ではないけど、どうか、気負わないでほしい。俺の気持ちは、へえ、ってそれくらいで思ってくれればいいよ。クラスの女子に疑われた手前、少し気まずいし、矛先が保志さんに行くのが俺は嫌だから。ただ、やっぱり、少しだけは、考えてほしいかも。どっちだって感じだな。
手紙ってやっぱり、難しい。でも、今、書いていて少し楽しくなってきた。影もこういう気持ちだったんだろうなと思う。
保志さん、夜になると、結構不安が増す。きっともう永遠にたった一人であるということに、慣れてない。どこにいるんだろうって、不意に考える。寂しくもあるのかもしれない。
保志さん、でも、こうして、影を知っている唯一の人と、影のことを話せるのは、嬉しい。ありがとう。じゃあ、眠くなってきたので寝ます。おやすみ。保志さんにとっては、おはようか。
それでは。
森田 陽
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