きみは溶けて、ここにいて【完】




 放課後、花壇へ向かう前に、森田君の下駄箱にこっそりと目を向けてしまう。

昨日、手紙を入れたばかりなのに、今日の朝にはもう森田君からの手紙が私の下駄箱に入っていた。


まだ、中は確認していない。



 星がめぐり、季節は少しだけ傾いて、今は、もう、秋の半ばにさしかかろうとしていた。

日が暮れるのが随分と早くなり、肌寒く感じ始める時期だ。花壇へ行って、花の枯れ具合を確認する。

もう少ししたら、チューリップの苗を植える。
春になれば、また綺麗な花が咲いてくれると思う。



「保志さん」


 不意に名前を呼ばれて、辺りを見渡す。

だけど誰もいなくて、後ろを振り返ってみたら、「上」と声が落っこちてきた。

そっと見上げれば、ベランダに肘をついてこちらを見下ろす森田君がいた。

いつも一緒にいる人たちの姿はない。



 今も、周りの目には怯えてしまう。

誰かに見られていたら、と思いながら、おずおずと手を振ったら、森田君は察してくれたのか、「教室に誰もいないから、声かけた」と言った。


ベランダで何をしていたんだろう。

黄昏時だ。
物思いにふけてでもいたのだろうか。



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