きみは溶けて、ここにいて【完】
「何してるの?」
「……花壇の、確認」
「なに? 聞こえなかった」
「花壇の、確認っ、」
へえ、とあまり興味のなさそうな相槌を打って、森田君は、ベランダの淵から少しだけ身を乗り出すような体勢をした。
「保志さん、俺の手紙、もう見た?」
「えっと、まだなんだっ、……帰ってから、いつも、見てる」
影君の手紙は、朝一で確認してしまうことが多かったけれど、森田君からのものは、ついつい笑ってしまいそうになるから、何も気にしなくてもいい自分の部屋で見ることにしていた。
私の返事に森田君は、一瞬だけ、なんだか少しだけ不満げな表情を浮かべていたけれど、すぐに、口角をあげて、「結構、力作」と言った。
そして、ひらひらと手を振ってきたかと思ったら、教室のほうへ、すぐに消えてしまう。