きみは溶けて、ここにいて【完】
―――『文ちゃんの正義って地獄みたいだ』
鼓膜の裏にずっと張り付いている悲痛な声が、言われたときと同じ鮮度で再生される。中学生の頃、一番大切だった人を傷つけた。それで、返ってきた言葉だ。
思い出せば、身体が強張ってしまう。
忘れればいいのに、忘れられない。そういうことが、積み重なって、もうどうにもならないのに、後悔ばかりが膨らんでいく。
いつまでたっても、破裂してくれない。後悔は、呪いのようなものだ。もう二度と繰り返したくない。
我に返った時には、花壇の一部分に水たまりができていた。同じ場所に、水を与えすぎてしまったみたいだ。花に罪はないのに、最悪だ。
ごめんね、と心の中で謝って、自己嫌悪する。
私は、本当に駄目だ。
何の取り柄もない。
本当に、駄目で、嫌になる。
そうやって落ち込んでいたら、一通の手紙を交わしただけで、まだ何にも森田影君のことなんて知らないのに、なんとなく、私と影君は、似ているのかもしれない、と思った。