きみは溶けて、ここにいて【完】





 相談の内容を見返して、鮫島君や久美ちゃんの名前を出してしまっていないか、確認する。


それから、少し迷った末に、“できれば、森田陽君には秘密にしてほしいです。無理なお願いだったら、本当にごめんなさい”と付け加えた。



 鮫島君は、森田君と仲がいい。

それに、自意識が過剰かもしれないけれど、私の友達といったら久美ちゃんだと、気づかれてしまうかもしれないと思った。



 次の日の放課後に、またこっそりと森田君の下駄箱に入れると、その次の日の朝にはもう返事がきていた。


早く書かれている内容が見たいと思いながらも、玄関で開けるなんてことは決してできない。


折れないように便箋を鞄にしまって、急いで、トイレへ向かう。一番奥の個室の鍵をかけてから、少し乱れた息を整えた。


 蓋のしまった洋式トイレの上に鞄を置いて、封筒を取り出す。


二つ折りになった便箋を開けば、いつも通り、一番上には、綺麗な字で、「保志 文子様」と書かれている。


いつもなら、上から順番にじっくりと読むのだけど、今日は相談の答えが知りたくて、違う部分を飛ばして、相談したことに触れている部分から先に読むことにした。





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