相思相愛マリアージュ(前)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
「頭部のCT撮影が完了した。結果はこれ…打撲傷だけで、脳には異常は見られなかったよ…」
高木先生はモニターに映し出されたCT画像を見て、奏弥さんの判断に納得した。
「異常は見られないな…しかし、朝まで経過観察は必要だな」

高木先生の処置した男性の方が右の大腿部骨折と大怪我を負っていた。

「高木先生…産気づいた妊婦さんが来るから…俺はそっちの方に行くけど…遥も連れて行っていいかな?」

「ん、あ・・・まぁ―・・・いいよ…俺は嫌だと言っても…どうせ連れていくだろ?」

「うん」
奏弥さんは強く頷いた。
「じゃ高木先生、頑張ってね…ほら、行くぞ。遥」

私は奏弥さんに連れ出される。

「未熟児ですか?」

「いや、別に…臨月の妊婦さん…」

二人で最低限度の明かりしか灯っていない廊下を歩く。
真冬の冷たい廊下。
冬の寒さとは違う得体の知れない寒気が背筋に走った。

「何だか…奇妙な気配を感じるんですけど・・・」



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