相思相愛マリアージュ(前)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
そして、高屋社長夫妻は梓さんと高屋副社長を対面させた。

彼女もこの残酷な現実を見たんだな…

俺はカズの回診に付き添い、高屋副社長の病室に訪問した。

あの時のヘルプの電話。

高屋副社長の最後の肉声だった。

「・・・事故現場でも最後まで自分は大丈夫だと言っていたようだ…母子を優先してくれと懇願したらしい…」

「そっか…」

最初の所見では彼女の雅君はトリアージ的に黒に近かった。

それでも、諦めないでくれと高屋副社長は現場に駆け付けた医師にそう言った。

その深い愛に打たれた若い医師が二人の命を救う為に全力を注いだ。

目の前のベットで横たわる高屋副社長が奇跡を起こしたんだな…


これだけの傷を負って、二人を…


「・・・ダメだ…涙が出て来た…」

「相変わらずマキは涙腺が緩いな…」

「うるさい…カズはどうも思わないのか??」

「…患者にいちいち感情移入していたら、カラダが持たない…」

俺は手の甲で涙を拭いた。

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