相思相愛マリアージュ(前)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
「高木先生よりも少し上ぐらいかな?」

「分室とは言え、あの年で院長だ…凄いな」

「何、杉村先生も出世に興味あるの?」

「まぁな…槇村先生は全然ないようだけど…」

「産婦人科…あったぞ」

「じゃ私は小児科の方に見て来ますね…」

「あぁ」

私は小児科の診察室の方に足を向ける。

「川上遥さん」

私は誰かに旧姓で名前を呼ばれた。
振り返れば、高坂先生が懐かしそうに私を見ていた。

患者の一人でしかない私の名前をちゃんと憶えていてくれた。



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