敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
「だったらなんですか? あなた、完全に彼に誑かされて、私を疑っていますよね」

「気を悪くされたのなら本当にごめんなさい」

私は慌てて詫びた。

頭ごなしに嘘だと決めつけられれば、誰だって不愉快になるだろう。しかし雪村さんがこんなに憤るということは、やっぱり彼女は嘘をついていないのではないだろうか。頭が混乱して、ますますわからなくなった。

「私のほうこそかっとなって申し訳ありません。改めて言いますね。仁さんは最低な人です」

謝りながらも威圧的な雪村さんに、私は押し黙ってしまう。きっとここで私がなんと返しても、彼女は反論してくるだろう。できればもう仁くんへの罵りは聞きたくない。

そのとき、カフェの出入り口のベルが鳴り、やっと仁くんがやって来た。

「仁くん」

とっさに立ち上がった私とは裏腹に、雪村さんはさっと体を背け、小さくなってしまう。

「雪村さん?」

私は訝り、彼女を見下ろす。

「あなたでしたか、雪平(ゆきひら)さん」

私たちのテーブルに近づいた仁くんは、雪村さんに冷ややかな声でつぶやいた。

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