敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
「雪……平さん?」

雪村さんは苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「ああ。道理で誰だかわからなかったわけだ。彼女の本当の名前は雪村ではなく雪平で、俺の会社の取引先社長の令嬢だ」

暴露する仁くんに、私は呆然とする。

「雪平さん、偽名を使っていたのですか?」

私が問うと、雪平さんはぎゅっと唇を噛み締めた。

答えない彼女を捨て置き、仁くんが続ける。

「雪平さんには何度も交際を申し込まれたが、付き合った覚えはない」

「え?」

私は目を瞬かせた。

それでは仁くんの元カノというのも嘘だったというのだろうか。

「思わせぶりな態度を取ったつもりもないが」

仁くんは声を歪めた。

途端に彼女はものすごい形相で仁くんを睨みつける。

「そうです。私は仁さんの元カノなんかじゃない。見向きもしてもらえなかったの。でも仁さん、結婚しないと言っていたじゃないですか。嘘つき!」

悲鳴のような叫び声に、私は圧倒されてしまう。

どうやら雪平さんは仁くんに片想いしていたらしい。

仁くんは表情ひとつ変えなかった。

< 114 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop