敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
当の仁くんのお母さんは、勝手に食器棚や冷蔵庫を開けて食事の準備を始めている。

父たちはソファに座って寛いでいた。

「ごめんね、仁くん、美玖」

母ひとりが申し訳なさそうな状況に、私も仁くんも困惑した。

それでも私たちを案じて駆けつけてくれたのだ。追い返せるはずがない。

「こっちこそ気を揉ませてごめんね。せっかく来てくれたんだし、みんなでお寿司食べようか? 今日買い出しに行ってきたから、食材もいっぱいあるよ。なにか作るね」

私の言葉に仁くんもうなずくと、母はほっとした表情になった。

女子三人で、おつまみなど簡単なものを作る。

結婚式以来に家族みんなが集まって、宴会が始まった。

仁くんのお母さんは本来の目的を忘れたかのように、親四人で盛り上がっている。

私と仁くんは蚊帳の外状態だ。

「お父さんたち、私たちそっちのけだね」

仁くんとソファの隅っこに並んで座りながらひそひそ話す。

「楽しそうでなによりだ」

仁くんは両親たちを見つめ、柔らかく目を細めた。

< 127 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop