敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
「仁くん、私がホラー映画を観ながら柴犬のマスコットを握ってるの、知ってたんだね」

「ああ。ずっとかわいいなと思っていた」

「んっ!」

私は再びナプキンで口もとを抑えた。

「かわいいなんて……」

結婚してからというもの、仁くんは度々私をそう表現するが、正直戸惑いを隠せなかった。

私の中の仁くんは、もっとクールなイメージなのだ。

幼い頃からやけに落ち着いていて、どこか冷めているようにさえ見えて、こんなにさらっと甘い言葉をかけてくるようなタイプだったとは思ってもみなかった。

仁くんいわく、『口に出すと歯止めが利かなくなりそうで、無意識に抑えていたのかもしれない』らしいが、こちらは言われ慣れていなくて反応に困ってしまう。

顔だけじゃなく耳まで熱くなった。

「あ」

なにげなく耳を触ったとき、着けていたはずのピアスの片方がないのに気がついた。

とっさに周囲を見回すが、いつどこで落としたのかもわからない。

家からここまでの移動距離を考えると、探し出すのは不可能だろう。

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