敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
仁くんは頬を緩め、私の口もとに手を伸ばす。

「クリームがついてる」

指先で口の端をさりげなく拭われ、顔が熱くなった。

ただの幼なじみだった頃は、そんなことしなかったのに。

日を追うごとに彼にときめきが増していく。

それでも、私はやっぱり……。

不意に思い出すのは、前野さんに別れを切り出されたときのことだった。

もう二度と誰かを好きになって、裏切られたくない。

その思いがどこかで仁くんに惹かれる気持ちにストップをかけている気がした。

心の傷は簡単には癒やせない。

仁くんは前野さんとは違うのに、どうしても切り離せなかった。

どれだけ仁くんが私を愛してくれても、いつまでもそのトラウマが邪魔をしそうで怖かった。


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