敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
「はぁっ?」

とっさに呆れた声が出た。

いくら紳士的な見た目をしていても、中身はろくでもない。日本でもニューヨークでも、どうしてこんなに不誠実な男性が多いのだろう。

結局男性はみんなこうなの?

ひとりの女性だけを一途に愛せないの?

こんなところでトラウマを抉られるなんて最悪だ。

前野さんのことなど、もう二度と思い出したくなかったのに。

『やっ……』

強い力で手首を掴み、ジョシュアは再び唇を寄せてきた。

『ふたりだけの秘密だよ――』

『やめろ』

そこへよく通る低い声がして、私は勢いよく振り返った。

「仁くん!」

ジョシュアの拘束が緩み、仁くんのもとに駆け寄る。

間一髪のところで仁くんが戻って来てくれて助かった。

『おいおい、暴力はよしてくれよ? 未遂だ』

ジョシュアをデッキの端に追い詰める仁くんの目が怖く、ジョシュアは露骨にうろたえる。

『見苦しい言い逃れをするな』

「仁くん、私ほんとになにもされてない」

仁くんが今にもジョシュアを海に沈めそうで、とっさに言い添えた。

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