敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
「それ、語り出したら船が日本に着くぞ」

「そんなにあるの?」

「何年美玖のそばにいて、美玖だけを見てきたと思う?」

仁くんがあまりにもまっすぐな目をするから、私は気恥ずかしくなる。

「初めて美玖への気持ちを自覚したのは小学生の頃だ。近所にニュージーランドから引っ越してきた家族がいただろう?」

「うん。私と同い年の女の子がいたね」

もう二十年以上前の話だ。

「ああ。その家族はあまり日本語が話せなくて、コミュニケーションが取れずに困っていた。そうしたら美玖が『英語を習う』と言い出して、気がつけば英会話教室に入り日常会話ができるようになっていただろ。あのとき、美玖の行動力と思いやりに胸を打たれた」

「あれは……私が単に女の子とお話ししたかっただけだよ」

私は小学校に入学したばかりだったし、あの家族のためになにかしてあげたいとか、そういう立派な考えはなかった。

そしてそれがきっかけで私は語学に興味を持ち、今英語を話せているのだから、私のほうが彼らに感謝しているエピソードだ。

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