敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
「美玖にとって人を思う心は当たり前すぎて、それがどれだけ素晴らしいのかを気づいていないだけだ。美玖が体を張って友人を守ろうとしているところも何度も見た。俺も助けられた経験がある」

私は女の子なのに生傷が絶えない小学生で、よく仁くんに心配をかけていたのだ。

「美玖のそういう姿を見るたびに、俺は友人以上になりたい、美玖と一生一緒にいたいと思うようになったよ。俺は初めから、美玖と結婚することしか考えていなかった」

プロポーズは突発的にしたのではないと知り、仁くんの本気が身に染みた。

長い年月をかけて、仁くんは私を選んでくれたのだ。

「……ありがとう」

私は仁くんのジャケットの裾を掴み、小さな声でささやいた。

……だったら仁くんはこの先も、ほかの女性に手を出そうとしたりしないよね? 私を裏切ったりしないよね? 悲しませるようなことはしないよね……?

何度も心の中で問いかける。

怯えずなんのわだかまりもなく、仁くんを好きになりたい。そう強く願った。

私は無言で仁くんと眼差しを交わす。

もういっそ、このままここで時が止まればいいのに。

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