敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
たしかに私は嫁姑問題とは無縁だ。私が生まれた日の翌日、仁くんを連れて病院に駆けつけ喜んでくれた彼のお母さんとは、今も変わらず仲がいい。

「まあ一ノ瀬さんの両親とは、住んでるところが離れてるからありがたいかな」

あかりは不満を吐き出して少しすっきりしたようで、軽やかに笑ってデザートに注文したティラミスを頬張った。

「あっ。そういや前野さんなんだけど、この間いきなりものすごい様相で職場に現れたのよ」

出し抜けに前野さんの名前が出て、私はビクッとした。

「え?」

「顔は真紫に腫れ上がってるし足は引きずってるしで、上司がすぐに『なにがあったんだ? 警察に行くか?』って駆け寄ったんだけど、前野さんはマンションの階段で転んだだけだって言い張って。でも前歯も二本折れてるらしいし、どう考えったって嘘だと思う」

眉をひそめたあかりに、私はとっさに返す言葉を失ってしまう。

いったい前野さんになにがあったのだろうか。

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