敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
実家はちょうど夕食時だったらしい。

キッチンに立った母が私に視線を向ける。

「うん。トンカツをたくさん揚げたところだったのよ。美玖の分もあるわ」

「ほんと? やったあ」

なんの連絡もせずに帰ってきたから私の分はないと思っていたのに、今日スーパーで豚ロース厚切り肉が特売だったらしくごはんにありつけた。

トンカツにサラダ、お味噌汁、小鉢がふたつ。十分すぎるほどの量だ。

ダイニングテーブルに並べるのを手伝って、三人でごはんを食べる。

「いただきまーす。うーん、おいしい。お母さんのごはん最高」

結婚して自分がキッチンに立つようになり、さらにそう思うようになった。同じレシピで作ってもなんだか違うのだ。母の手料理には特別な味がある。

マンションにひとりでいるときは全然食欲がなかったのに、トンカツが水のように入った。ぱくぱく食べる娘の姿に、父も母もうれしそうだ。

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