敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
食後は父に誘われ、将棋を一局手合わせした。将棋の基礎知識は父に仕込まれているので、実家にいたときはいつも相手をしていたのだ。

明日は朝から一緒買い物に行こうと母に声をかけられた。了承すると、明後日は親戚のおばさんに会いに行こうねと言われる。ここ数日なにもしていなかったのに、一気に予定が入った。

将棋を終えるとお風呂に入り、二階の自室に向かった。

急にやって来たにもかかわらず、六畳の洋室には埃ひとつ落ちていない。ベッドに横になると、寝具からは太陽のにおいがした。

「ああ……すごく落ち着く」

久しぶりに心が凪いだ。

現実からは逃げられないけれど、今は少しだけ仁くんを忘れたかった。


実家でできるだけ親孝行しながら三日過ごし、とうとう仁くんが海外出張から帰ってくる日になった。

朝、仁くんから【今夜帰る】と短いメッセージが送られてきたが返信していない。

仁くんの帰宅予定は午後八時頃だが、午後五時を過ぎると私は気が気ではなくなってきた。

マンションのリビングで私の置き手紙を読んだ彼から今度は電話がかかってくるかもしれない。

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