敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
実家に帰った理由を聞かれたら、なんと答えればいいだろう。

あれから時間はあったのに、なにも考えられていなかった。

でも理由なんて必要ないのだ。私が離婚を申し出れば仁くんは二つ返事で了承するだろう。この間、セックスを拒んだときだってそうだった。仁くんにはいつも余裕があって、冷静さを失うことはない。私の存在なんてあってもなくても同じだろう。今だってきっと私だけが仁くんのことを考えている。

虚しさに襲われながらも、晩ごはんの準備を手伝った。

今夜は私の大好物のお好み焼きだ。

ダイニングテーブルにホットプレートを用意し、親子三人でわいわい楽しむ。

でも私は半分も食べないうちに箸が止まってしまった。

「あら美玖、もうおなかいっぱいなの?」

「うん」

「めずらしい。いつも二枚は食べるのに」

「おやつにドーナツ食べちゃったから」

訝る母に苦笑いを返した。

時計ばかり見てしまい落ち着かない。

< 97 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop