優しい幽霊さん
世の中には、必要とされる人と不必要とされる人がいる。僕、梔子景光(くちなしひろみつ)は後者の人間だろう。

青空が広がる屋上、僕はぼんやりと屋上の下でにいる生徒たちを見ていた。もうすぐテスト期間だから教科書を手に友達と問題を出し合う人、腕を堂々と組んで歩くカップル、汗を流して部活を楽しむ人たちーーー。僕とは違い、光に当たって誰かに必要とされる人たちがそこにはいる。

僕は足元に置かれ、開かれた通学用かばんを見た。そこに入れられた教科書には、「消えろ」とか「いなくなれ」とか油性ペンでたくさん書かれ、ボロボロにされたものもある。そう、僕はいじめられているんだ。誰も僕を必要としない。

ドクンドクン、僕がこうしている間も、心臓はこうして動いている。生きるために動き、僕の体に血液を送り届けていく。この臓器をこれほど恨んだことはない。

「……あの時、臓器提供してくれる人なんていなきゃ、今頃天国で暮らせていたのに……」
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