お飾りにしか⋅⋅⋅なれない
悠希⋅⋅⋅side
母・美樹が死んだ。
俺には、親父がいない。
だが、そんな事は生物学的には
ありえない。
わかっていても
俺は、母に訊ねる事はなかった。
母は、女で一つで
俺を必死に育ててくれた。
そんな母は
働きづめだった。
俺は、元より頭は良かったから
高校は、特待で入り卒業をした。
母に少しでも楽して欲しかった
だが⋅⋅⋅⋅⋅⋅
俺の高校卒業、医学部合格を
待ったように母は亡くなった。
母が、亡くなくなると
どこで調べたのか
父と名乗る人物が現れた。
そいつは、門田不動産社長
門田 広。
その男が
俺を自分の家へと連れて行った。
家に入ると
ギャンギャン、騒ぐ女。
女の近くに立つ
いけすかない顔をした男
腹違いの兄らしいが⋅⋅⋅⋅⋅⋅
俺は、その女に向かって
「うるせいな。」
と、言うと
「なんてことなの!
生まれがわかるわ
どこの馬の骨か
わからないような女の⋅⋅⋅⋅⋅
と、ベラベラ喋る女に
お前が、何をしってる
母の何を⋅⋅⋅⋅⋅⋅と、思い
目の前にある机を蹴りあげ
「お前が、俺の母親の
何を知ってるんだ!!」
と、言うと
女は、男の後ろに隠れて
ワナワナふるえて
「⋅⋅⋅⋅⋅あっ⋅⋅⋅⋅あなたっ
こんな⋅⋅⋅乱暴な⋅⋅⋅⋅⋅人とは
一緒に⋅⋅⋅⋅⋅暮らせま⋅⋅⋅⋅⋅せん。」
と、言うから
「一緒に暮らすきなんかねえよ。
こいつが、来いと言ったから
きただけだ。」
と、言う俺に
「お前、こいつとか、言うな。」
と、いけすかない男が言うから
そちらを見ると
ヒッと顔をした。
「しるか、そんな事。
母を妊娠させて、捨てたような男を
なんと呼ぶ?
親父か?そんなもんいない。
俺には、母親しかいないんだよ。
もう、いいか
こんな茶番に付き合っている
暇は俺にはないんだ。」
と、言うと
「大学の費用とか、大丈夫なのか?」
と、言う男に
「必要ない。
俺は、優秀なんだよ。免除だ。
それに、母親がきちんと
してくれていたし
俺もバイトは、していた。」
と、言うと
だが⋅⋅⋅⋅⋅とか
でも⋅⋅⋅⋅⋅とか
言っている男に
「俺に二度関わるな。
俺の親は、母さんだけだ。」
と、言い捨てると
その家から立ち去った。
母さん、あんな男のどこが
良かったのか
と、聞きたくなった。
俺は、大学に行き
勉強とバイト、実習をやりとげた。
何度か、あいつの秘書とかいう
男から連絡があったが
俺は、連絡を取る気は
まったくなかった。
医学部を卒業し
すぐに海外に渡った。
門田家とは、あの日から
一度も接触していない。
まぁ、完全に忘れていた。
医学部時代にお世話になった
教授から、診て欲しい患者さんが
いると連絡がきた。
日本から離れて三年
日本へと帰国した。