年下男子に追いかけられて極甘求婚されています
「なぎささん、お茶の片づけをしたら夕飯に行きましょう」
「えっ、あっ、うん」
言われるがまま愛莉ちゃんについていくと、厨房に隣接する休憩スペースに夕食が準備されていた。
「宴席が始まったら戦場と化しますからね、今のうちにモリモリ食べてスタミナつけてください」
「戦場……?」
「はい、戦場です!」
愛莉ちゃんは茶碗にいっぱいご飯を盛りつけ、やる気満々だ。私は初めての接客仕事の緊張と帯が苦しいので、なかなか食が進まなかった。
ここで賄いをいただいているのが従業員の半分もいないし、女将さんや潤くんの姿もない。
「もしかして交代でご飯を食べるの?」
「そうですよ。私たちより先に食べてる方もいますし、場合によっては後からの方もいます。お客さんの入りに左右されますからね、日によって違ったりします」
「そっか、大変なんだね。……ねえ、愛莉ちゃんにとって女将さんってどんな人?」
「そうですね、仕事に対しては厳しいけど、すごく気遣ってくれる方ですね。私だけじゃなくて、回りの方々すべてに気遣いができます。私は住み込みで働かせてもらっているので、とてもよくしてもらってます」
「住み込みなんだ」
急にドキッと胸が締め付けられる。女将さんや潤くんにとても近い位置にいる愛莉ちゃんはどこからどうみても富田屋の一員で、私なんて到底追いつけない場所にいるんだと感じてしまう。それがなんだか歯がゆくて悔しい気持ちになるのはなぜなんだろう。