年下男子に追いかけられて極甘求婚されています
「あの子ったら逃げるように県外の大学に進学したのよ。本当は地元の大学に入って勉強しながら家の仕事も覚えてもらうつもりだったんだけどね」
「そうなんですか。でも松風でアルバイト頑張ってました」
「まあ頑張ってもらわないとねぇ。県外に行く条件が松風さんで修行することだったから。頑張ってたならよかったわ。てっきり跡を継ぐのを嫌がって逃げたのかと思ってたのよ。いい情報ありがとうね。あの子、女っけがないからあっちのお嬢さんでも連れ帰ってくれると嬉しいんだけど。一応跡取り息子だし、ねえ?」
「あ、はは、そうですねー」
私の完璧な愛想笑いを誰か褒めてほしい。どう答えろというんだ。こんな複雑な気持ちになるのは初めてで戸惑う。どれもこれも潤くんのせいだ。潤くんが私のことを好きだというから──。
ううん、それよりも。
潤くんは高級老舗旅館富田屋の御曹司で跡取り息子なんだった。親にも期待されているくらいだから、当然のように富田屋を継ぐのだろう。
あまりにも近くにいすぎてそのすごさをすっかり忘れていたようだ。潤くんも大変だな。そういう住む世界が違う人の元にはそれ相応の相手が必要なわけで。
「ほら、ね、余計に私ではダメなんだって。わかるでしょ、潤くん」
帰り道、私は一人ごちた。
呟きは誰に聞かれることもなく、吹き抜ける風と共に流れていった。
「そうなんですか。でも松風でアルバイト頑張ってました」
「まあ頑張ってもらわないとねぇ。県外に行く条件が松風さんで修行することだったから。頑張ってたならよかったわ。てっきり跡を継ぐのを嫌がって逃げたのかと思ってたのよ。いい情報ありがとうね。あの子、女っけがないからあっちのお嬢さんでも連れ帰ってくれると嬉しいんだけど。一応跡取り息子だし、ねえ?」
「あ、はは、そうですねー」
私の完璧な愛想笑いを誰か褒めてほしい。どう答えろというんだ。こんな複雑な気持ちになるのは初めてで戸惑う。どれもこれも潤くんのせいだ。潤くんが私のことを好きだというから──。
ううん、それよりも。
潤くんは高級老舗旅館富田屋の御曹司で跡取り息子なんだった。親にも期待されているくらいだから、当然のように富田屋を継ぐのだろう。
あまりにも近くにいすぎてそのすごさをすっかり忘れていたようだ。潤くんも大変だな。そういう住む世界が違う人の元にはそれ相応の相手が必要なわけで。
「ほら、ね、余計に私ではダメなんだって。わかるでしょ、潤くん」
帰り道、私は一人ごちた。
呟きは誰に聞かれることもなく、吹き抜ける風と共に流れていった。