ベールアウト
部下に知っていることをすべて吐き出させた。
あの店か!!すべて当てはまる。どうして上司があの店に連れて行ったのか、なぜあの女が
病室に駆け込んできたのか。
なぜあいつは自分で言わなかった。少し腹が立った。





















気づいたらあの店の前にいた。
まだ開店前のようだったが、黒髪の小柄な女を見つけた。
ここのオーナーなのか?
少し話がしたいというと黙ってうなずいてまだ開店前の店に入れてくれた。
「お前は一体。」そんな言葉しか出てこなかった。

恋人だったのか?なぜ言わなかった。そんな質問は口にできなかった。

「ただの店員と客だよ。」
「全て部下に聞いた。」
「そう。だからって別に」
「そうだな」
「結婚するみたいで、よかったね。おめでとう」

これ返すね。私が持っていても仕方ないから。

それは自分が大切にしていたお守りで、いつからなくしていたのかと思っていたがこの女に渡していたのだとようやく知った。
幸せになってね。そんな言葉をかけられ、帰路でひとり何しに行ったのか、本当に今更なことで手元に返ってきたお守りを何度も見ては思い出せないその記憶のことを考えるのを辞めた。

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