一夏だけじゃ、だめ。
高嶺の花だと言われるが、気さくな性格をしているからモテるし、そんな珠璃に言い寄ってくる男たちはだいたい整った顔をしていた。
不本意ではあるが、友人の間では俺はただの腐れ縁でとっくに玉砕してると思われているし。
そもそも告白したことはないので、玉砕とは言わないと思う。 これはちょっとした意地だけど。
「ダメだー! どんどん読んじゃう! 最新巻まで全部借りていってもいい?」
「ん、いいよ」
こうやって珠璃が俺の部屋に上がり込んでくるのは昔からで、彼氏がいるいないに関わらずよくあることだった。
でも、歴代の元彼の中で、俺との関係を疑われて破局……なんてことは多分なかった。 知らねーけど。
「ありがとう! 明日から夏休みだし、最高だね〜。 また近いうちに返しにくるね」
彼氏と別れたばっかりと思えないくらいハツラツと楽しそうな珠璃に、疑問が募る。
なんで別れた? 元気あんのか?
……花火大会、だれと行くの?