一夏だけじゃ、だめ。
夏休みの学校
「あっち〜〜、むり……」
「おま、下敷きで仰ぐのずりー! 貸せよ!」
夏休みに入ったのに学校にいて、側では小学生みたいな会話が繰り広げられていた。
期末テストの赤点補習。 たった数点届かなかったせいで、こうして補習を受けている。
「伶依は下敷き持ってねーの?」
「ない」
「声が冷たすぎる。 どした?」
一応心配そうに見てくるふたりだが、先週の珠璃のことを話したって、信じてもらえない気さえする。
家に遊びに来る仲だとは到底思ってもなさそうだし。
珠璃はというと、元気に漫画を借りていったのを見て察するが、補習なんかない。 今頃家で漫画を読んでるのかもしれない。
「トイレいってくる」
「カラオケ寄って帰ろーぜ!」
「わり、今日はパス。 先帰ってていいからな」