一夏だけじゃ、だめ。
珠璃のことばかり考えてしまって、ひとりでいたかった。
そして、教室があまりにも暑いから、図書室に避難しに行こうと思った。
ーーガラッ
ひやり、とクーラーの冷たさが肌に触れ、生き返った感じがした。
なんか適当に本借りて帰るかな。 と、小説コーナーに足を向ける。
「あれ、伶依じゃん! 補習終わったの?」
「っ、え、珠璃?」
制服姿で、手に数冊本を持って微笑む珠璃。
驚いた。 こんな偶然あるか?
「まさか、珠璃も赤点……?」
「失礼な。 夏期特別講座に申し込んでたから、あたしもそれがさっき終わったところなの」
むう、と頬を膨らませて怒ってみせるけど瞳は笑っていて、癒されてしまう。
赤点の補習と特別講座。 同じように制服を着て学校に来ていても、天と地ほど違う。